1.企業年金法制の考え方がよくわかる
本書の執筆陣には確定給付企業年金(DB)法制定に携わった現役官僚が名を連ねているので、厚生労働省の考え方が良くわかる。例えばキャッシュバランス型制度における年金額の改定方法などが詳しい。また、DB法の制定および厚生年金保険法の改正において、受託機関の忠実義務が盛り込まれ、これにより加入者や受給者が直接運用機関を相手取って受託者責任違反の訴訟を提起できる根拠規定が設けられたことが書いてある。
2.第8章はお薦め
この章では退職給付会計を扱っているが、最新の動向を網羅しており一読の価値がある。例えば、米国の財務会計審議会におけるキャッシュバランス制度の債務評価方法の議論の中では要支給額的な債務(walk away liability)を下限とする検討も行なわれている点とか、PBOに関する批判的検討にも言及されている。
3.第10章の「年金制度の将来」
この章では今後の法改正の論点が詳述されており有益だった。
4.年表は便利
414ページの年金関連年表は、日本のみならず海外の年金制度の動きが一覧でまとめられており役に立つと思った。
5.明快な「坪野」節
426ページからは、最近の年金不信をあおる議論や、安易な一元化論に鉄槌を下していて、坪野氏の年金制度への熱い想いが感じられた。
年金行政に長年携わってきた著者らによる、企業年金制度全体を余さず網羅した解説書&資料集。旧版は、政省令・通達レベルまで掘り下げた詳細な解説も然ることながら、制度設立時の論点・根拠や検討経緯といった行政担当者ならではの情報テンコモリだったのが好評を博したが、新版では、2004年公的年金改正法や、それに伴う厚生年金基金および確定拠出年金の制度改正についてキッチリ手当てされており、その完成度および資料的価値は益々高まっている。企業年金に携わる者は勿論、企業年金を専攻しようとする大学院生も必携すべき一冊。
余談だが、旧版刊行時は連続マイナス利回り&代行返上開始といった制度存亡の時期だっただけに、編者の「長期的視点で考えるべし」という正論に耳を貸す者は(業界の大御所ですら)極稀であったが、そんな最悪の状況から脱却・改善しつつある現在(2005年)に改訂版が出たのは、まさに時宜に適ったものと言える。特に、巻末の「代行返上を行った基金から反省の声が聞こえてくるのも長期的な見通しの欠如の表れかもしれない」という編者の弁に耳の痛い思いをせぬよう、一業界人としては研鑚を積まねばなるまいて。